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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)59号 判決

一 特許庁における手続きの経緯、審決の理由の要点、本願商標の構成、指定商品及び登録出願日、並びに、引用商標の構成、指定商品、登録出願日及び設定登録日が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 本願商標と引用商標との類否の判断

当事者間に争いのない本願商標の構成において、該構成は子持円輪郭と、その中央に大きく「UC」の欧文字、その下部に円輪に沿つて「UNION CREDIT」の欧文字、さらに「C」の欧文字の始筆部に図形を配してなるものであること、及び、右図形が世上親しまれた昆虫であり、二本の触角、七個の斑点を有する「てんとう虫」の特徴を端的に表わしたものであることについては、当事者間に争いのないところであるが、本願商標における右図形の配されている位置、大きさ、及び、構成全体から受けるイメージについてみるに、中央の「UC」の欧文字は肉太に顕著に大書されているのに対し、右図形は、右欧文字の中の「C」の始筆部に、文字の大きさに比して小さく、てんとう虫が止まつた状態に描かれており、しかも両者は同じ子持円輪郭内に配置されているものであるから、かかる構成を全体として観察すれば、右図形は「UC」の欧文字にデザイン的に付加された右欧文字と一体のものとして看取されるものであると認めるのが相当である。したがつて、本願商標に接する取引者、需要者は、この文字と図形の組み合わせの全体を不可分なものとして認識するものと解するのが相当である。被告は、両者が別個のものとして看者の注意を引くものである旨主張するが、右主張は採用しがたく、むしろ取引者、需要者は、右図形は該欧文字に付加された装飾的な存在としての印象しか受けず、大書された「UC」の欧文字に強い印象を受けるものというべきである。

したがつて、本願商標は、「UC」の欧文字に着目して「ユーシー」なる称呼が生ずることはありうるかもしれないが、その構成から単に「てんとう虫」の図形のみを分離抽出して、「テントウムシ」の称呼が生ずるものではなく、また、「てんとう虫」の観念が生ずるものでもないと認められる。

他方、引用商標は、構成中の図形部分に相応して、「テントウムシ」の称呼、「てんとう虫」の観念が生ずることについては当事者間に争いがないから、本願商標と引用商標とは、その称呼及び観念において非類似の商標であると認められる。

更に、外観についても、両商標は前記の構成よりなるものであるから、両者は明らかに異なるものである。

以上によれば、本願商標と引用商標とは、「テントウムシ」の称呼、「てんとう虫」の観念を共通にする類似の商標であるとした審決の判断は誤つたものであり、審決は違法としてその取り消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取り消しを求める原告の本訴請求は理由があるからこれを認容する。

〔編注1〕本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五五年一一月二〇日、別紙(一)表示のとおりの構成よりなる商標(以下、「本願商標」という。)について、第二〇類「電飾看板、その他本類に属する商品」を指定商品(その後、指定商品を第二〇類「電飾看板、立看板」に補正)として、商標登録出願(昭和五五年商標登録願第九三七〇〇号)をしたが、昭和五八年九月二六日拒絶査定を受けたので、同年一一月一六日これを不服として審判の請求をした。特許庁は、これを昭和五八年審判第二三〇五八号事件として審理したうえ、平成元年一二月二一日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決をなした。

二 審決の理由の要点

1 本願商標の構成、指定商品及びその登録出願日は、前項記載のとおりである。

2 これに対し、原査定において本願商標の拒絶の理由に引用した登録第一四四八四八一号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙(二)に表示したとおりの構成よりなり、第二〇類「畳、畳表、畳床、畳べり、むしろ、こも、花びん、水盤、風りん、照明がくぶち、灯ろう、立看板、食品見本模型、人工池、記念カツプ類、葬祭用具」を指定商品として、昭和四七年一〇月一一日登録出願され、昭和五五年一二月二五日に設定登録されたものである。

3 本願商標と引用商標との類否についての判断

(一) 本願商標の構成は子持円輪郭と、その中央に大きく「UC」の欧文字、その下部に円輪に沿つて「UNION CREDIT」の欧文字、さらに「C」の欧文字の始筆部に図形を配してなるものである。

しかして、本願商標は、全体としてまとまりのある構成であるとしても、これらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の事由も見出し得ないから、これに接する取引者、需要者は構成中の該図形部分に着目して、これより生ずる称呼、観念をもつて取り引きに資する場合も決して少なくないとみるのが相当である。

しかして、「C」の欧文字の始筆部に描かれた図形は世上親しまれた昆虫であり、二本の触角、七個の斑点を有する「てんとう虫」の特徴を端的に表わしたものとみるのが相当である。

そうとすれば、本願商標は、該図形部分に相応して、単に「テントウムシ」の称呼、「てんとう虫」の観念を生ずるというべきである。

(二) 他方、引用商標は、四隅を丸くした縦長長方形の上半分を黒塗りし、その中に「Live」、「Better」、「With」、「SEKISUI」の欧文字を四段に白抜きして書し(「SEKISUI」の文字は他に比して大きく書してある。)、その下半分に、世上親しまれた昆虫である、二本の触角、六個の斑点、足等、「てんとう虫」の特徴を有する図形を端的に表わしてなるものである。

しかして、これら文字部分と図形部分とはそれぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認め得るものであり、更にこれが全体として一体不可分のものとして把握しなければならない事由もまた見出し得ないから、これに接する取引者、需要者は、図形部分に着目し、これより生ずる称呼、観念をもつて取り引きに資する場合も決して少なくないというを相当とする。

そうとすれば、引用商標は、構成中の形部分に相応して、「テントウムシ」の称呼、「てんとう虫」の観念を生ずるものといわなければならない。

(三) してみれば、本願商標と引用商標とは、「テントウムシ」の称呼、「てんとう虫」の観念を共通にする類似の商標であり、且つ、本願商標の指定商品は引用商標の指定商品に内包されるから、結局、本願商標は、商標法四条一項一一号に該当し、登録することができない。

〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。

別紙

(一)

<省略>

(二)

<省略>

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